2014年からフリーランスiOSプログラマとして活動を始めて2年と8ヶ月。フリーランスという働き方は自分には最高にしっくりきてて、毎日楽しくお仕事させていただいてたのですが、色々とタイミングが重なりまして、タイトルの通り、いったん休業して「会社員」になることにしました。
どこに就職するのかと言いますと、サンフランシスコにあるFyusionというスタートアップにジョインします。
無事H-1Bビザが通りまして、ちょうど昨日、スタンプの押されたパスポートが郵送されてきたところです。
フリーランスとしての実績もまとめたいところですが長くなるのでここでは省略して、ご報告の意味でも、自分の考えを整理しておく意味でも、就職することにした経緯や理由等を書いておこうと思います。
経緯
上述しましたが、僕はフリーランスという立場を100%楽しんでいましたし、海外企業も含めて「就職」したいという願望はありませんでした *1。
以下は今年の3月ごろの話です。当時の状況としては、
- ちょこちょこと海外から仕事をいただくようになっていた
- もっと「海外から名指しで仕事がくる」ように、海外カンファレンス登壇とかいろいろ仕掛けようとしていた *2
という感じで、「フリーランスとして」「日本をベースにしつつ」「たまに海外に」行けたら楽しいなというスタンスで動いていました。
投資家からのコンタクト
3月はじめ頃のある日、とあるベンチャーキャピタルの方から会いたいという連絡をいただきました。この時点では何の用事かわからなかったのですが、普通に考えて投資先のアプリ開発を手伝って欲しいという話だろうなと。
(VCの人とか上位レイヤーすぎて、末端で手を動かしてるエンジニアなんて駒としか思ってなさそう)・・・という勝手な偏見もありつつ、ちょっと疑心暗鬼のままお会いしたのですが、まずは自己紹介がてらそのVCの投資先について一通りご説明いただいて、これがまた僕的にはどの会社のプロダクトもおもしろかったわけです。*3
で、実は投資先の会社のCEOが僕と話したいと言ってきてる、と。(たぶんGitHubで見つけたんだと思います。それしか入り口がないので)
その会社がFyusionなわけですが、この時点でもう僕は少なくとも何らかの形で関わりたいと思うぐらいには惹かれていて(後述します)、でもどういう「話」なのかはわからないのでまずは話してみよう、という感じでした。
CEOとのスカイプ
その翌週ぐらいにCEOのRaduとスカイプすることになり、僕が次の用事があったので実質3分ぐらいしか話せなかった *4 のですが、その3分でRaduは、ユーと仕事をしたい、働き方はパートタイムでもフルタイムでもリモートでも希望通りでいいよと。で、僕は働くなら一緒に顔を突き合わせてやりたい、と。おおそれじゃあビザの申請マジで急がないといけないからすぐにファウンダー達と話してよ、と。
3分で一気に事が進みました。
ちなみにこのとき確か3月中旬ぐらい。H-1Bビザの申請は4/1にオープンして、一瞬で埋まります。そしてさらに僕が3月後半からドイツに行く予定があり、申請書類の準備期間は実質一週間ぐらいしかありませんでした。
ファウンダー陣とのスカイプ
メールで時間調整して、翌日の午前中にはファウンダー陣とスカイプすることになりました。
正直、グダグダ、どころか95%相手が何言ってるかわからなかったです。第一声でPardon?って言った気がしますが聞き返しても聞き取れないのでそれも言わなくなりました。
唯一、"Printer"とか特徴的な単語がひとつだけ聞き取れたりして、「Canon時代の仕事について聞いてますか?」と確認してしゃべる、みたいな感じでどうにかこうにか乗り切りました。
参考:
- スカイプ面接がトラウマになったきっかけがわかる記事:はじめて英語でSkype面接受けたメモ - Over&Out その後
- 僕のリアルな英語力がわかる動画: 海外のiOSカンファレンスに登壇する
そしてオファー
とはいえ全然トンチンカンなコミュニケーションをしてたとは思うので、これは「ない」だろうなと思ってたら、スカイプの30分後だか1時間後だかにオファーのメールが!
条件を確認して、外出していた奥さんに電話かけて「〜ということなんだけどサインしていい?」って聞いて、サインして返送。あちらからもすぐにサイン入りのが返ってきました。
のべ2時間ぐらいのスピード就活でした。ビザ申請の期限という後押しがなかったらもっと迷っていたかもしれません。
Fyusionに惹かれた点
大きく分けて2点あります。
「欲しいスキル」が得られそうだった
僕が身につけたいと思っているスキルに、「英語」「コンピュータビジョン」「3Dプログラミング」「機械学習」があります。
で、Fyusionは、
- CEOのRaduは、3D点群処理のオープンソース・プロジェクト「Point Cloud Library (PCL) 」の設立者
- OpenCVのコミッタでもある
- 他のファウンダー陣・メンバーもロボット工学・3Dコンピュータビジョン・機械学習とかの博士号もってる人がゴロゴロ
- 提供しているサービスもそれらの技術をベースとしている
- もちろん英語を使う
というわけで、全部揃っているなと。
やろうとしていることが腹落ちした
彼らは「空間写真」を撮るアプリ「Fyuse」というプロダクトを既に世に出していて、
(Fyuseのわかりやすい記事:動画ともパノラマとも違う“空間写真”ってなんだ? Fyuse創業者に話を聞いた | TechCrunch Japan)
こういうものを撮影してソーシャル上にシェアできるアプリです。
(Fyuseの空間写真をアニメーションGIFに変換したもの)
このアプリは一見飛び道具感があるのですが、中では実際に撮影された動画とスマホの各センサの値から対象を3次元モデルとして解析しています。
上に貼った例をよく見ると、人間の向きと3次元のロゴの向きが一致していることがわかると思います。
これはいわば「普通のスマホのカメラを3Dスキャナにする技術」をSNSという使ってもらいやすい形で提供しているようなもので、
「3次元データがたくさんあれば我々の得意分野である3Dコンピュータビジョンの技術でいろんなおもしろいことができるぞ!」
というところに彼らのやりたいことがあります。単にギミッキーな写真撮影SNSをつくってるわけじゃないぞと。
たとえば最近では、このFyuseで撮ったデータをHoloLensでホログラム投影、みたいなことをやってたりします。
僕はハードウェアという「現実世界のモノ」と繋がるアプリの開発を色々やってきて、やはりその「現実世界を見る『目』」のところで技術的強みがあると楽しいよなー、ということを常々感じていたので、彼らのやろうとしていることは非常に腹落ちしたわけです。
あと、Fyuseは普通に撮影フォーマットとしてもかなり可能性があるんじゃないかと思っています。一見ギミッキーですが、写真よりも多面的に記録でき、動画よりも軽量で柔軟に閲覧でき、2Dだけど3Dモデル的な情報も持っているという点で、「空間を捉える」ためのフォーマットとして普遍的な良さがあるなと。
2ヶ月間リモートワークしてみてのPros/Cons
フリーランスでお手伝いしていたところは7月までに収束させて、8月からリモートで手伝い始めてます。当然Pros/Cons両方あります。
Pros
- AVFoudation, Core Image, Metal/MetalKit/MetalPerformanceShaders, Acceralateと、iOSアプリ開発の中でも特に興味のある部分の実装に携われている
- iOS 10とかの新機能を積極的に使っていく雰囲気がある
- バージョン互換とかは後から考えよう、という感じ
- CEO, CTO, その他ファウンダー陣全員が毎日ゴリッゴリにコードを書いている
- 一番ソースを把握してるのは彼ら。
Cons
- チャットの速さに全然ついていけない
- 全部読んでたら仕事にならない
- 流し読みしても情報量0%なのでもはやメンションくれない限り読んでいない
- フリーランスとしての立場が恋しい
- おもしろい仕事の話をいただいたり、おもしろいことをやってる人に会っても、そこから展開させられないのがもどかしい
サンフランシスコには引っ越しません
あっちに住んで仕事をしてもOKなビザを獲得したわけですが、家庭の事情もあり、基本的には東京にいます。今のところは、1ヶ月アメリカ(オフィス)、2ヶ月日本(リモートワーク)、ぐらいのつもりです。
が、変わるかもしれません。フリーランスとしての働き方も、最初はリモート指向だったけど早々にお客さんのところに行ってやるスタイルに変えたり、短納期案件が楽しいとかじっくりやる方が楽しいとか時期によって色々変遷があったりもしたので、日米往復生活もやりながら試行錯誤していくつもりです。
まとめ
というわけで、長くなりましたが、フリーランス生活をエンジョイしていたところで急に降ってきたご縁で大きく方向転換することになりました。
そもそもの目的である「身につけたいスキル」は身につくのか、アメリカと日本の往復生活は成立するのか、会議では全然聞き取れないだろうけど仕事になるのか等々、いろいろと不安もあります。通用しなくてすぐに逃げ帰ってくるかもしれません。
が、せっかくの機会なので、楽しみつつ色々と吸収してこようと思います!
*1:3年ほど前はありましたが
*2:詳細はこちら:iOSDCで発表しました『海外のiOSカンファレンスに登壇する - 完全版』 #iOSDC - Over&Out その後
*3:今回就職する会社ではないところで、その後アプリ開発をお手伝いしたところもあります。そこのプロダクトも相当ぶっ飛んでておもしろいので許可がとれたら紹介したい
*4:27分ぐらいRaduが会社の説明をしてて、残り3分になったところで「11時から別のスカイプあるんだけど・・・」とやっと切り出した